私の「嫌われ計画」が全部裏目に出ている件

三日目。
嫌われるために、まず「使えないマネージャー」を演じることにした。
作戦その一:仕事を忘れる。

「凜、昨日頼んだ会場の問い合わせどうなった?」

「あ……忘れてました」

「……」

想が黙る。

(よし、怒る! 怒れ! 怒って嫌いになれ!)

「じゃあ今日やっといて」

「……え」

「忙しかったんだろ、色々。大丈夫」

怒らなかった。
なんで。

「そんな顔しないで。人間、忘れることもある」

むしろフォローされた。
作戦その一、失敗。
作戦その二:態度を悪くする。
朔が資料を持って近づいてきた。

「鷹宮さん、この書類、田中先生に出しておいてくれる?」

ここだ。

「……それくらい自分で出したらどうですか」

言ってしまった。
朔がゆっくりこちらを見る。

(怒る、怒る、怒る──)

「そうだね、次からそうする」

「……え」

「確かに、毎回頼むのも悪かった。ごめん」

謝られた。
毒舌の人が謝った。
作戦その二、大失敗。
作戦その三:感じ悪くする(湊に対して)。

「凜ちゃん、新しいシュークリーム買ってきたんだけど食べる?」

「いりません」

「え」

「甘いものは好きじゃないので」

本当は好きだが、今は嫌われることが優先だ。

「そっかあ」

湊がしゅんとする。

(そのまましゅんとしていて!)

「……じゃあこれ、ひとりで食べるか」

湊はシュークリームをひとつ取り出し、大事そうにかぶりついた。

「うまっ」

そして幸せそうな顔をした。
全然傷ついていない。回復力が高い。
作戦その三、効果なし。

「凜ちゃん、本当にいらない? めちゃくちゃ美味しいよ」

「……少しだけ」

結局もらってしまった。
私の嫌われ計画は、初日から三連敗中だ。
放課後、ひとり帰り支度をしていると、蒼が隣に来た。

「凜ちゃん、最近なんか頑張ってるね」

「……何がですか」

「なんか、わざと失敗しようとしてたり、つっけんどんにしてたり」

心臓が止まるかと思った。

「なんで分かるんですか」

「なんとなく。でも全員気にしてないから大丈夫だよ」

「……大丈夫って」

「凜ちゃんのこと、みんな好きだから」

さらりと言われた。

「三日しか経ってないのに」

「うん。でも好きなものは好き」

蒼は笑う。その笑顔は、何かを隠しているような気もするけど、今は分からない。

「……私のこと、嫌いになってくれませんか」

「えー、無理」

「なんで」

「だって、嫌いになれないもん」

それが答えだった。
嫌いになれない、か。

(やっかいな人たちに捕まったな)

私はため息をついて、帰り道を歩き始めた。