私の「嫌われ計画」が全部裏目に出ている件

土曜日。
約束通り、湊と新作スイーツを買いに行くことになった。
待ち合わせは駅前。
湊は時間ぴったりに現れた。私服姿の湊は、制服よりさらに背が高く見えて、周囲の視線を集めていた。
「凜ちゃん! 来てくれた!」
「行くって言いましたから」
「えへへ。じゃあ行こう、お店はこっち」
歩き出す湊の歩幅が大きすぎて、私はちょっと小走りになった。
「あ、ごめん。歩くの速かった?」
「少し」
「合わせる合わせる」
湊は速度を落として、私の隣を歩く。
「凜ちゃん、休日何してるの?」
「大体、勉強か読書です」
「えー、一人で?」
「はい」
「友達と遊ばないの?」
「あまり……」
「なんで?」
「声をかけるのが苦手で」
「凜ちゃんは声かけられたら行く?」
「……場合によっては」
「じゃあ今日みたいに俺が誘えばいい」
「それが毎回続くわけでは」
「続けるよ。また誘うから」
あっさり言われた。
「……桐嶋くんは、友達多そうですね」
「見た目でそう思われるけど、実はそうでもない」
「なんで」
「クールに見えるから近づきにくいって言われて。本当はスイーツ語りたいだけなのに」
「語れる相手がいないんですか」
「バンドのみんなには話してるけど、想は甘いもの苦手だし、朔は興味ないし、蒼は話半分で聞いてるし」
「私でよければ聞きます」
「本当に?」
「スイーツは好きなので」
湊の顔がぱあっと明るくなった。
「じゃあ今日いっぱい話す! まず今から行くお店なんだけど、限定フレーバーがチョコレートとストロベリーと抹茶で──」
歩きながら語り続ける湊。
声が弾んでいる。
(この人、本当に好きなんだな)
お店に着くと、湊は迷わずチョコレートとストロベリーを頼んだ。
「凜ちゃんは?」
「抹茶をひとつ」
「抹茶好きなの?」
「落ち着く味なので」
「へえ」
湊は自分のシュークリームをかぶりつく。
「……うまっ! 凜ちゃん、これ絶対うまいから一口食べて!」
「いいですよ」
「いいの!? じゃあはい」
差し出してくる。同じものを頼めばよかったのでは、と思ったが言わなかった。
一口食べる。
確かに美味しかった。
「でしょ! 朔に教えたくなってきた。あいつ甘いもの食べないけど、これは食べると思う」
「なんで」
「上品な甘さだから。朔、上品なものが好きだから」
「……詳しいですね」
「三年一緒にいるから」
湊はストローでジュースを飲みながら言った。
「凜ちゃん、もっとみんなのこと知ったら、きっと好きになるよ」
「もう少し、知ってきた気がしますけど」
「まだまだだよ。みんな、もっと面白いから」
(面白い、か)
問題児たちを面白いと思う日が来るとは、一週間前は想像もしていなかった。
「桐嶋くん、ありがとうございます。今日」
「え、何が?」
「誘ってくれて」
「こちらこそ。語れる人ができて嬉しかった」
湊は照れたように頭をかいた。
その仕草が、どこか子供みたいで、なんだかほっとした。