勘違いだらけの契約婚

 ミリアリアがつぶやくと、ユージーンが鷹揚に頷く。

「ああ。先祖代々、王国を守るために守護結界を構築してきた。土地柄、領民は魔の耐性があるし、魔法騎士は総じて魔力量が多めだ。守護結界の構築には血の誓約があるため、侯爵家に連なる者でなければ発動できない。ゆえに豊富な魔力量を持つ者が領主となる。妻は夫の非常時に代わりを担う役割を持っている」
「……つまり、わたくしは命を賭して結界を張る役目にふさわしい、と判断されたのですね」
「まぁ、そういうことだ。領主には他の仕事もある。結界の維持管理は騎士団の管轄だ。しかし、いざというときに備えて、侯爵夫人は守護結界の構築ができねば話にならん」

 腕を組んだユージーンは侯爵家当主の顔だった。
 顔立ちが整っていると、憂いを帯びた横顔すら美しいのだなと感心してしまう。

(しっかりと、契約妻としての役目を果たさなくては……!)

 ミリアリアは拳を握り、凜とした表情で詳細の説明を求める。

「具体的にはどのようにすればよいのですか? わたくし、魔法は一度も使ったことがありません。自分に魔力があることも知らなかったぐらいですから……」
「君には十分な素質がある。やり方は教えるから、これから覚えればいい。まずは、そうだな。右手を出してくれるか」
「こ、こうでしょうか?」

 おずおずと右手を差し出す。
 彼の大きな手が自分の手と重ね合わせた瞬間、心臓が跳ねるように脈打った。