勘違いだらけの契約婚

 契約を破棄──それはすなわち、契約婚の終焉を意味する。
 ミリアリアは震える唇を懸命に動かした。

「恐れながら、ユージーン様。わたくしたちは契約によって結ばれた夫婦です。それを解消するということは、この婚姻関係に終止符を打つ、ということですか……?」
「違う。そうではない。婚姻関係は続行だ」
「続行……つまり、今まで通り?」
「ああ。変わらず、俺は君の夫だ。……どうやら、少し混乱させてしまったらしいな。俺が言っているのは、偽の夫婦関係をやめて、普通の夫婦になりたいということだ」

 当然のように言われたが、ミリアリアの困惑は深まるばかりだった。
 彼が言う、世間一般の夫婦がわからない。
 実家の使用人の噂を聞いただけだが、世の中には鴛鴦夫婦もいれば、仮面夫婦もいるらしい。夫婦関係は表面的には穏やかでも、その内面は家庭によって異なる。
 ミリアリアの両親の仲は険悪ではなかったが、実の娘を差別している時点で、一般家庭とは違うだろう。童話によくある結婚して幸せになりました、という結末は幻想だと思って生きてきた。生活環境や考え方が違う男女が一つ屋根の下で住むにあたり、今までの習慣や価値観の違いは必ず出てくる。