勘違いだらけの契約婚

 厄介だった邪龍の吐息は遮断され、結界外の影響はなくなった。立ちこめていた邪気も少しずつ守護結界が浄化していく。
 張り詰めていた気をゆるめ、ミリアリアはほっと息をつく。
 淡い緑に包まれた風の檻の中では、邪龍が巨体をぶつけて結界を破壊しようともがいている。噛み砕こうと何度も牙を突き立てる。そのたび、反動でミリアリアの魔力が削られていく。
 耐えきれずに一瞬ふらつきかけたが、なんとか踏みとどまる。
 だが結界内でもがく邪龍の暴れぶりはすさまじく、パキッと不穏な音が走った。見れば、檻の一部にヒビが入っている。もし、このまま結界が破られれば──。
 ミリアリアはぐっと奥歯を噛みしめた。

(わたくしはユージーン様の妻。一歩も引くわけにはいかない……!)

 両手を突き出し、魔力を注いで修復作業と、結界の重ねがけを行う。
 淡い緑の輝きが虹色の透明膜に変化する。急激に体内の魔力が減っていくが、構うものか。ここで守り切らなければ一体、何のためにいるのか。
 国を覆う守護結界と共鳴し、光の粒がきらきらと舞った。二重の結界で拘束された邪龍の動きが鈍くなる。苦しげな鳴き声が続く。
 今が好機だと、魔力の出力を上げるべく意識を研ぎ澄ます。
 ガーネットの瞳が金色の光を帯びた、その瞬間──後ろからユージーンの声が鋭く飛んできた。

「ミリアリア! 無理をするな。魔力が暴走するぞ」