勘違いだらけの契約婚

(わたくしが守りたいのは、この街。ユージーン様が守ってきた土地と、そこに暮らす人々……)

 魔力の核に想いを込めた瞬間、風が呼応するように震え、一瞬だけ周囲の音がすべて消えた。
 指先から放たれた緑の魔力が空にひゅんと飛び、街を包み込む守護結界の裂け目へと滑り込んでいった。破れた布を縫い合わせるように、魔力が流れていく。
 穴の開いた箇所が徐々に小さくなる。だが、まだ穴は完全には塞がっていない。

(まだよ、もう少し……!)

 ミリアリアは魔力をさらに送り込む。
 力業だとわかっていても、今は時間が惜しい。邪龍を足止めするためには、魔力を温存しておかなければならない。一から張り直すよりも、応急処置でしのげればいい。
 ようやく裂け目が閉じきったとき、一陣の風がミリアリアの耳元をかすめた。
 淡く光る緑の粒子が、祝福のように舞い降りる。まるで風の大精霊が励ますように寄り添ってくれているようだった。
 守護結界の穴が塞がれたことで、他の魔獣の気配はなくなった。おそらく、結界の効力で浄化されたのだろう。残る大仕事はひとつ。

「ここからが正念場よ。大丈夫、ユージーン様とずっと練習してきたもの。次は今までの応用をするだけ。風の檻を作って、あの邪気ごと閉じ込めるの」