勘違いだらけの契約婚

 的確な避難指示をする騎士に、ミリアリアは放心状態の老人の保護を求めた。彼は快諾してくれたが、ふと首を傾げる。

「君は避難しないのか?」
「わたくしはユージーン様の妻です。あの方がお戻りになるまで、邪龍の動きを止めます」
「……なっ、あなたが閣下の奥方!? いけません、お一人で立ち向かうなんて危険すぎますよ。せめてユージーン様がお戻りになってからでも遅くはないのでは」
「いいえ。今は一刻の猶予もありません。この状況、あなたならわかるはず。魔獣の出現はおそらく結界のどこかを内側から破られたのが原因でしょう。ですから、守護結界を張り直さなくてはなりません。……ただ、わたくしは土地勘がありません。適した場所はありますか?」

 状況は切迫している。
 必死の形相で問いかけると、数拍の間を置いて返事が来る。

「……邪龍を閉じ込めるのなら、教会がある高台がいいと思います。あそこは見晴らしもいいですし、街の様子もよく見えます」
「ありがとうございます。あなた方はすぐにこの場から離れてください。少しでも遠い場所へお願いします」
「はい! 奥方もどうかご無事で……っ!」

 頷き合い、ミリアリアは高台へと駆け出した。