勘違いだらけの契約婚

 自分は臣下。彼の忠実なる部下だ。
 ようやくお荷物だった自分にも、彼の妻として恩を返せる日が来たのだ。何を命じられても、すでに命を捧げる覚悟はできている。
 ミリアリアは感極まって震えながら、次の命令を待った。
 しかしながら、ユージーンの言葉は予想していたものと、まるで違うものだった。

「君も知っているとおり、我が一族は国を守護する使命を背負っている。俺の妻となったミリアリアは、東の守り手の一人。守護結界の構築ができるようになってもらわねば困る」
「守護……結界……」
「民を守るための結界術だ。君の瞳は魔力耐性が強い者である証し。魔力量もこの領地を守るのに十分だ。守護結界は民だけでなく、自分自身を守る唯一の手段でもある。侯爵夫人が使えなくては話にならない」
「では、わたくしを妻に望んだのは……」
「そういうことだ」

 重々しく頷くユージーンを見て、ミリアリアは納得する。

(やっと腑に落ちましたわ。皆様がわたくしの世話をせっせとしてくださるのは、契約妻の貧相な見た目を気にしてのことだと……。でも、違ったのですね。本当の目的は守護結界の構築。てっきり何かの儀式の贄にされるのものと覚悟していましたが、妻に選ばれた理由がこれではっきりしました。ならば命を賭して、この領地を、閣下をお守りせねば!)

 大事な使命を与えられ、心が沸き立つ。
 ここにいてもいい理由ができたことに、感謝の念を抱かずにはいられない。

「だが、この部屋では手狭だ。訓練場に場所を移し、早速練習してもらう。準備はいいか?」
「もちろんです!」

 元気よく答えた妻に、ユージーンは少し気圧されたように瞬いた。
 だがすぐに咳払いで気を取り直し、「では、行くぞ」と席を立った。執事が心得たようにドアを開けて待ってくれており、ミリアリアはユージーンの後ろについて訓練場へ向かった。