勘違いだらけの契約婚

 朝日が昇ると同時に、ユージーンは調査に向かった。
 執事とともに見送りに行くと、彼は苦笑しながら「夕方までには戻るから」と言って、ミリアリアの頭にそっと手を置いた。くすぐったい気持ちに駆られながら、その背中を見送った。

(不安ばかりになっていたらよくないわ。ユージーン様はきっと無事に戻ってくださる。だって、わたくしのもとに戻ると約束してくださったのだもの)

 弱気になるな。信じて待つのが妻の役目なのだから。
 そう自分に言い聞かせ、胸元に手を当てた。
 深呼吸をして、淡い桃色が混じった東の空を見上げた。朝日が地平線を押し上げるように、金色の雫が境界線を染めていく。夜の名残を抱えた空気はひんやりとして、澄み切った静けさの中に、草木の葉が露をまとってきらめいていた。
 まだ鳥の声もまばらな時間、空は一日の始まりを告げるように、明るさを増していく。
 ミリアリアは無意識に、耳元に挿したスミレの髪飾りをそっと撫でた。