勘違いだらけの契約婚

 三段のケーキスタンドには、色とりどりの菓子と軽食が品よく並んでいた。
 上段には、淡い藤色のマカロンや紅茶のサブレ、ローズ型の小さなゼリー。中段には金柑のコンポートとフィナンシェ、白桃のタルトレット。どれも一口サイズで、まるで宝石のようだ。
 下段のサンドイッチにはエディブルフラワーが添えられていて、見た目も華やかだ。

「葉の形をした紅茶のサブレは、客の好みによって茶葉を変えるのもありだな。俺はスモークサーモンとハーブのリエットを挟んだサンドイッチが好きだ。スモークの風味とチーズのコクが絶妙で、癖になる味だ」
「……リエット、ですか?」
「ハーブやクリームチーズと混ぜてペースト状にしたもののことだ。パンに塗ってもいいし、挟んでもいい。見た目は地味でも、驚くほど奥深い味になる。君はどれが一番好きなんだ?」
「そうですね……白桃のタルトレットでしょうか。甘すぎず、瑞々しくて、薄く重ねられた白桃の飾り付けもとても美しいですから。見ているだけで幸せな気持ちになります」

 うっとりと、宝石のようなきらめきを放つタルトレットを見つめる。

(こういうとき、手で取ってもいいのかしら? それとも小皿で食べるのが正解……? どれも食後のデザートで提供されたことはあるけれど、ケーキスタンドに載った状態で対面するのは初めてなのよね……)