勘違いだらけの契約婚

 しかも、女性だけのお茶会では、ユージーンの助けは借りられない。貴族社会のルールに疎いミリアリアは圧倒的に戦力外だ。迂遠な貴族用語が飛び交う話の輪に入れず、孤立するのは当然の帰結だろう。
 作り笑顔のまま固まる未来が見えて、さあっと血の気が引いた。
 不安に揺れる胸を押さえながら、ミリアリアはおそるおそる口を開く。

「……世間知らずのわたくしが、お茶会に出てもよいのでしょうか?」

 震える声で問いかけると、ユージーンは力強く肯定した。

「当然だろう。本来、侯爵夫人は客人をもてなす側だ。ホストが美味しい茶葉やお菓子についての知識を知らなくてどうする? 本当に他人に喜んでもらえる水準なのか、自分の口で確かめる必要があるとは思わないか?」
「……思います。知識だけでは、実際の味まではわかりません。もてなす茶菓子のセンスは料理人の腕にもよりますし、客人の好みの問題もありますから」
「では、まずは俺とお茶を楽しむことから始めよう。記念すべき最初のお茶会だ。身内だから話題提供の心配もない。マナーはいったん置いて、君の好みを教えてくれ。覚えたほうがいいことは徐々に身に付ければいい」

 思いがけず前向きな言葉をかけてもらい、ガーネットの瞳に薄い膜が張る。

(人が泣くのって悲しいときや悔しいときだけじゃないのね……。嬉しくても泣きたくなるなんて感情、初めて知ったわ)

 感極まって目尻にあふれた雫を指先で拭う。
 自然と口元がゆるんだ。辛抱強く返事を待つユージーンに、ミリアリアは精一杯の笑みを向けた。

「……ユージーン様のお茶会、ぜひご一緒させてください」