勘違いだらけの契約婚

(優雅にお茶を……? どうしましょう、まったく想定していなかったわ。結界術も大事だけど、社交も妻の大事なお務めよね。閣下に恥をかかせないように、お茶会のルールを身に付けておかなくては)

 今まで社交界に出る機会がなかったから、いずれ出席する日が来るなんて、考えたこともなかった。お飾りの妻は外に出ないものだと思い込み、その可能性を最初から排除していた。
 けれど、よく考えれば、侯爵夫人がすべての招待を欠席し続けるのは無理がある。社交ゼロで引きこもる妻など、どう言い繕っても世間体がよくない。
 すぐには無理だが、ゆくゆくは、そういう機会もあるかもしれないのだ。

(ああでも、貴族との会話なんて、やはり恐れ多いわ。もちろん、練習は頑張るつもりだけれど、お茶会に出席することで閣下のご迷惑になる未来しか思い浮かばない……)

 くすくすと笑われるのが関の山ではないだろうか。
 どう頑張っても、美しく着飾った貴族の奥様たちの会話についていける気がしない。
 流行のドレスもお菓子も歌劇も、何も知らない小娘なんて、嘲笑の的にされるだけだ。何のメリットも提示せず、すでにある派閥にすんなり入れてもらえるわけがない。