勘違いだらけの契約婚

 その中でカラコロと音を奏でるのは、蜂蜜色の丸い飴玉。その色合いは、夕暮れ前の空をゆっくりと溶かして固めたようだった。

「……綺麗な蜂蜜色ですね。コロンと丸くて可愛らしくて、喉の痛みすら忘れそうです。ガラス瓶もおしゃれで、見ているだけでも癒やされます」
「主治医から喉が腫れていると聞いたからな。俺は喉の調子が悪いときは、よくこれに世話になっているから効果は保証する」
「まあ、閣下の愛用品なのですね。そんな貴重なものを……もったいなくて食べられません。飾って保管してもいいですか?」
「飾ってどうする!? 飴なのだから、ちゃんと舐めて喉を労ってくれ。俺は君が苦しむ姿を見たくないんだ。もしなくなったら、また持ってくるから」

 少し拗ねた口調がなんだか子どもっぽくて、小さく笑ってしまった。それを目ざとく見つけたユージーンが気まずそうに唇を尖らし、視線をふっと逸らす。
 その仕草がまるで「笑うな」とでも言っているようで、ますます笑いをこらえるのが大変だった。お腹に力を込めて、ゆるみそうになる唇をぎゅっと引き締める。

(……閣下のこんな顔を見られるなんて、風邪を引かなければ知ることはなかったでしょう。たまには熱を出すのも悪くないかも、なんて言ったら怒られてしまうかしら)

 ミリアリアは、飴玉が入ったガラス瓶を両手でそっと包み込む。
 彼の優しさが詰まった瓶を見ているだけで、気持ちまで和らぐようだ。胸の奥に沈んでいた不安が、ふわりとほどけていくのを感じた。