勘違いだらけの契約婚

「ありがとうございました。閣下。何かあればメイドを呼びますから、わたくしのことは気にせず、どうぞお仕事に戻ってください」
「妻の一大事だ。急ぎの仕事は午前中に片づけた。緊急案件以外は後日にしろと通達済みだ。……それとも、俺がここにいては気が休まらないか?」
「い、いいえ。誰かがずっとそばで看病してくれることなんて、今までなかったですから。その、とても嬉しいです」

 ありのままに答えると、ユージーンが押し黙った。
 ちらりと見た彼はぐっと眉を寄せ、何かに耐えているようだった。

(先ほどまで穏やかだったのに、なんだか今は不機嫌そう……? はっ、そうだわ。わたくしったら熱に浮かされて、肝心の謝罪をまだしていないじゃない。謝って済むことではないけれど、ちゃんと言葉で表さないと……!)

 自分は契約妻。侯爵家の役に立つために花嫁に選ばれた身だ。
 だというのに、この体たらく。体調管理を疎かにした挙げ句、熱で寝込んで意識を手放してしまった。そして周囲の使用人のみならず、侯爵家当主にまで手厚く看護されている。
 契約妻の責務をまったく果たせていない。むしろ迷惑をかけている有様だ。