ユージーン・アストル・ラスフォード侯爵に望まれるまま、ミリアリアは式も挙げず、書面上の手続きのみで彼の妻になった。持参金も婚礼道具もない、身一つでの嫁入りだった。
後から聞いた話では、実家は多額のお金と引き換えに娘を売り払ったらしい。今まで生かされていた理由に納得したが、怒りは湧いてこなかった。
両親から愛情を向けられたことは一度だってない。血縁関係はあっても信頼関係はない。今まで、他人と同じ距離感でしか会話したことがなかったくらいだ。
そんな人たちに何かを期待するほど、無意味なことはない。
「俺との契約を覚えているか?」
執務室に呼び出されたミリアリアは、侯爵家当主であり自分の伴侶であるユージーンに端的に質問された。
切れ長の瞳は、じっと観察するようにミリアリアをその瞳に映す。
彼は常に無表情だ。冷たい美貌と揶揄される顔は怒っているようにも見えるが、侯爵家の使用人によると怒ってるわけではないらしい。感情を一切排した顔はめったに変わることなく、喜びや悲しみの色をまとうこともない。
「もちろんです、閣下。寝室は別にする。適切な食事を心がけて規則正しい生活をする。侯爵家の一員として領民を守る。お互いのプライベートに踏み込まない。侯爵家の妻として恥ずべき行いはしない。夫婦は助け合う。……以上です」
後から聞いた話では、実家は多額のお金と引き換えに娘を売り払ったらしい。今まで生かされていた理由に納得したが、怒りは湧いてこなかった。
両親から愛情を向けられたことは一度だってない。血縁関係はあっても信頼関係はない。今まで、他人と同じ距離感でしか会話したことがなかったくらいだ。
そんな人たちに何かを期待するほど、無意味なことはない。
「俺との契約を覚えているか?」
執務室に呼び出されたミリアリアは、侯爵家当主であり自分の伴侶であるユージーンに端的に質問された。
切れ長の瞳は、じっと観察するようにミリアリアをその瞳に映す。
彼は常に無表情だ。冷たい美貌と揶揄される顔は怒っているようにも見えるが、侯爵家の使用人によると怒ってるわけではないらしい。感情を一切排した顔はめったに変わることなく、喜びや悲しみの色をまとうこともない。
「もちろんです、閣下。寝室は別にする。適切な食事を心がけて規則正しい生活をする。侯爵家の一員として領民を守る。お互いのプライベートに踏み込まない。侯爵家の妻として恥ずべき行いはしない。夫婦は助け合う。……以上です」



