勘違いだらけの契約婚

 前日の夜からの重だるさは、気のせいではなかったらしい。
 今朝、起こしに来たメイドが一目見るなり、「奥様!? 顔が真っ赤ですよ!」と騒ぎ立てるまで、ミリアリアは自分が熱を出していることに気づかなかった。
 メイドが呼んだ侯爵家お抱えの主治医が診察した結果、「風邪ですね。疲労も溜まっているようです。熱が引いても、しばらくは安静にしてください。薬を飲めば、すぐによくなりますよ。また明日も来ますからね」と言い残して帰っていった。
 それから重粥を三分の一だけ食べて薬を飲むと、抗いきれない睡魔に襲われて、そのまま意識を手放した。次に目を覚ましたときは、主治医がいた椅子に、なぜかユージーンが座ってこちらを見ていた。

「……閣下?」
「起きたか。熱は少し下がったと聞いたが、まだ苦しそうだな」
「い、いけません閣下。風邪を移してしまいます。早くご退室ください」
「俺は滅多に体調を崩すことはないから安心しろ。それより、水を飲め。ゆっくりでいいから」

 水差しから注がれたグラスを受け取り、常温の水をゆっくりと飲み干す。
 自覚はなかったが、ずいぶんと喉が渇いていたらしい。しっかりと水分補給をすると、両手から優しくグラスが抜かれていく。
 サイドテーブルにグラスが置かれる音を聞き、ミリアリアは頭を下げた。