「申し訳ございません。閣下のお気を悪くさせた元凶がその報告書であれば、これから責任を持って薪にくべて燃やして参ります。すべて消し炭にいたしますので、どうぞご安心ください」
「消し炭!? は、早まるな。そんなことまで望んでいない!」
「しかしながら、閣下のお心をこれ以上、乱すわけには参りませんので」
「問題ない。俺の気のせいだったようだ」
「……ですが、わたくしの報告書には、致命的な不備があったのですよね? 重ねてお詫び申し上げます。報告書すらまともに書けないなんて……。己の不甲斐なさに猛省しております」
うつむき、声を絞り出すように言うのがやっとだった。
短い沈黙の後、ユージーンが慌てて否定した。
「い、いや。そんなことはない。よく書けている。自分のことを客観的に見た、立派な報告書だ。……妻の動向を知るのも侯爵家当主の務めだ。君が嫌でないのなら、ちゃんと目を通す。今後も報告書は俺に直接提出してくれ」
「本当ですか! ありがとうございます、閣下。これからも鍛練を重ね、記録を続けて参りますね」
「……あ、ああ」
彼の笑みが引きつっているように見えたが、気のせいだろう。
契約妻としての責務を果たすため、寝る前も自主練を頑張ろう。ミリアリアは上機嫌で朝食を完食した。ユージーンも残さず食べていたが、その顔は終始、憂いを帯びていた。難しい案件に思いを巡らせているのかもしれない。
仕事のことならば、ミリアリアが出しゃばるのはよくない。食堂を出て行く彼の後ろ姿をメイドとともに見送った。
「消し炭!? は、早まるな。そんなことまで望んでいない!」
「しかしながら、閣下のお心をこれ以上、乱すわけには参りませんので」
「問題ない。俺の気のせいだったようだ」
「……ですが、わたくしの報告書には、致命的な不備があったのですよね? 重ねてお詫び申し上げます。報告書すらまともに書けないなんて……。己の不甲斐なさに猛省しております」
うつむき、声を絞り出すように言うのがやっとだった。
短い沈黙の後、ユージーンが慌てて否定した。
「い、いや。そんなことはない。よく書けている。自分のことを客観的に見た、立派な報告書だ。……妻の動向を知るのも侯爵家当主の務めだ。君が嫌でないのなら、ちゃんと目を通す。今後も報告書は俺に直接提出してくれ」
「本当ですか! ありがとうございます、閣下。これからも鍛練を重ね、記録を続けて参りますね」
「……あ、ああ」
彼の笑みが引きつっているように見えたが、気のせいだろう。
契約妻としての責務を果たすため、寝る前も自主練を頑張ろう。ミリアリアは上機嫌で朝食を完食した。ユージーンも残さず食べていたが、その顔は終始、憂いを帯びていた。難しい案件に思いを巡らせているのかもしれない。
仕事のことならば、ミリアリアが出しゃばるのはよくない。食堂を出て行く彼の後ろ姿をメイドとともに見送った。



