「その透き通った紅玉の瞳、実に美しい。俺の妻に何ら不足ない。領地繁栄のために、どうか手を貸してほしい」
若き侯爵が許しを請うように跪き、ミリアリアに手を伸ばす。
誰もが目を逸らす忌むべき瞳をまっすぐ見つめるのは蒼紫(そうし)の瞳。何色にも染まらぬ漆黒の髪は魔力の高さを表している。柔らかなウェーブを帯びた黒髪は絹のように艶めき、涼やかな目元にある左の泣きぼくろが大人の色気を醸し出していた。
「ミリアリア嬢、君を花嫁として我が家に迎え入れる。今後は何不自由のない生活を保証する。君はただこの手を取るだけでいい」
この人を信じてもいいのかという不安を見透かしたような言葉に、心臓が嫌な音を立てた。表情が強張り、心拍数が上がる。それを意識した途端、息が浅くなった。
そろりと彼の後ろにいる両親に視線を移す。けれど、すぐに後悔した。血縁上の両親は鬼のような形相でミリアリアを睨んでいたからだ。
(そうだった。この邸にわたくしの味方はいない。だって、わたくしは「血塗られし瞳を持つ忌み子」で伯爵家のお荷物。……両親が愛するのは天使のような容姿の弟妹だけ。社交界にも出さず、ずっと邸に幽閉していた娘なんて早く追い出したいのでしょう)
彼らにとって、この縁談は厄介払いにちょうどよかったのだ。
ミリアリアは薄く息を吐き出し、覚悟を決めた。見目麗しい男の手に、自分のそれを重ねる。震えそうになる声を絞り出す。
「……あなたの家に嫁ぎます。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。侯爵閣下」
若き侯爵が許しを請うように跪き、ミリアリアに手を伸ばす。
誰もが目を逸らす忌むべき瞳をまっすぐ見つめるのは蒼紫(そうし)の瞳。何色にも染まらぬ漆黒の髪は魔力の高さを表している。柔らかなウェーブを帯びた黒髪は絹のように艶めき、涼やかな目元にある左の泣きぼくろが大人の色気を醸し出していた。
「ミリアリア嬢、君を花嫁として我が家に迎え入れる。今後は何不自由のない生活を保証する。君はただこの手を取るだけでいい」
この人を信じてもいいのかという不安を見透かしたような言葉に、心臓が嫌な音を立てた。表情が強張り、心拍数が上がる。それを意識した途端、息が浅くなった。
そろりと彼の後ろにいる両親に視線を移す。けれど、すぐに後悔した。血縁上の両親は鬼のような形相でミリアリアを睨んでいたからだ。
(そうだった。この邸にわたくしの味方はいない。だって、わたくしは「血塗られし瞳を持つ忌み子」で伯爵家のお荷物。……両親が愛するのは天使のような容姿の弟妹だけ。社交界にも出さず、ずっと邸に幽閉していた娘なんて早く追い出したいのでしょう)
彼らにとって、この縁談は厄介払いにちょうどよかったのだ。
ミリアリアは薄く息を吐き出し、覚悟を決めた。見目麗しい男の手に、自分のそれを重ねる。震えそうになる声を絞り出す。
「……あなたの家に嫁ぎます。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。侯爵閣下」



