幼なじみの救命士は、再会した初恋の私を今度こそ逃がさない 〜拒否権なしの溺愛同居〜

そんなことは勿論、声に出さないが、恋人が褒められるのはこそばゆい。
また緩みそうになる口元をさすっていると、遥希とバッチリ目が合う。
すると、芽依子だけにむけた笑顔で、AEDを掲げ説明していく。
母親たちの控えめな黄色い歓声以上に、芽依子は心の中で「もうっ、大好きすぎるっ」と叫んでいた。

遥希の説明を聞きながら、芽依子は職場に設置されていることを思い出した。
実際に使用したことは無いが、いざという時には慌てずに対処したい。
真面目な芽依子は後学のため、少し身を乗り出してみる。

「では、僕たちのお手伝いしてくれる人ー!」 

元気よく手をあげる子どもたち。
選ばれた数名が子ども向けのAEDがセットされた場所に向かった。
 
「今回は、大人の皆さんにもお願いしたいです」

爽やかな笑顔で話す遥希に、先ほどの母親たちを含めた女性たちが、勢いよく手を挙げる。
その勢いにおされそうだったが、芽依子も負けじと手を伸ばす。

「じゃあ、そちらの白のパーカーを着た女性の方」 

遥希の手が、白のパーカー姿の芽依子に向けられた。
そして、また別の女性や男性を指名していった。
一瞬だけ、合わさった視線に嬉しくなるも、すぐに気持ちを切り替えて指定された場所に座る。

遥希の説明を聞きながら、教えられた手順通りに進めていく。
芽依子が組んだ手の位置を、遥希がそっと両手で正す。
 
「場所は、ここ。しっかり押します」 
「はいっ」  
「腕は真っ直ぐ。もっと力入れても大丈夫ですよ」
「はいっ」
「そうそう、その調子」
「結構力いるっ……!」
「そうです。でも、めっちゃ上手ですね」

真剣な表情で参加者を見守る遥希は、家で見せる恋人の顔とはまるで違う。
 
「っっはっ……はっ」
「テンポはこれくらい。胸骨圧迫は周りの方と交代しながら続けることも大切なんです」 

(こんなに大変なのを……ずっと遥希は仕事にしてるんだ)

他の人にも指導している後ろ姿に、改めて遥希が命を救う現場にいることを痛感したのだった。