全力コンパス〜四神の恋は予測不能?!〜 ある日突然イケメン幼なじみの婚約者になっちゃいました!

今日は待ちに待った特訓の日!!っていっても特訓があるって言われたのは昨日で全然待ってはいないのだけど…
とりあえず楽しみ!!私も陰陽師になれるんだ!
約束の時間に門に行くと高柳さんが待っていた。
「おはようございます、麗様。車にどうぞお乗りください」
高柳様に促されるまま車内の中に入ると南月君が座っていた。
「南月君、おはよう!今日は南月君も一緒なんだね」
「ああ。あっちの人にも挨拶がしたいし。…北神さんは俺がいたらいや?」
なんか今日の南月君、…かわいい
「そっ、そんなことあり、ま、せん…」
赤い顔のまま必死に答えた。
「ふっ。辿々しすぎでしょ。なに?照れちゃった?北神さん、かわいー」
「なっ!かわっ?からかってます?!」
「からかってない、からかってない。焦っちゃってもっとかわいいね。俺の婚約者さんは」
なんか今日の南月君、おかしくない?可愛い大連発だよ?絶対からかってるし!
ていうか、そうだったっっ!!私って南月君の婚約者だったんだ!
一番気にしなくちゃいけないことじゃん!!!
でもいざ本人から言われると恥ずかしい。
南月君のことが、青葉君のことが私はずっと好きだったわけだし。すごい幸せなことだ。
でも何より…私この一週間大丈夫だったかな。
私は一様北神家の人だし次期当主でもある。けど私は何と言っても平民育ち。
もともと婚約者だった楓ちゃんとお茶したとき楓ちゃんは気にしてなさそうだったけど彼女の全ての所作に育ちの良さが滲みでていた。
もちろん楓ちゃんに敵うはずもない。
けど私なりに努力しないと!そうしないと南月君にも迷惑がかかっちゃうかもしれない。
「なに?不安そうな顔して」
「いやなんか南月君の婚約者としてちゃんとしなくちゃなと思いまして…楓ちゃんと比べて私は全然ダメダメだし…」
「そんなこと気にしなくていいから。麗はそのままでいいから。そのままのかわいい麗でいて」
なんか今日糖度高くないですか?
ていうか今、麗って下の名前で呼んだよね?!
そんなことを思って固まっていたせいでいつの間にか車はついていたようで…
「いつまで乗ってんの?着いたけど」
「そっ、そうだよね!!ごめん!」そんな返しをすると南月君は少し顔が不機嫌になった。
いや正しくはなった気がするだけだけど。南月君は顔にあんまり出ないタイプだから感情が読みにくい。
なんか怒らせるようなことしちゃったかな。
私は前を歩く南月君に置いていかれないよう小走りで南月君の後ろまで追いついた。
高柳さんは車で待っているらしく後ろで手を振りながら私たちを見送ってくれた。

何と言ってもこの家も豪邸。南月家よりは小さいけど豪邸は豪邸だ。
私の住んでいた家の何倍の広さがあるのか…
屋敷の中に入ると使用人さんたちが畳が敷いてある風通しが良い大きな部屋に連れて行ってくれた。
まさに和風。こんなのアニメとか漫画とかでしかみたことない。
2人で部屋に待たされた。その間も南月君は不機嫌のまま
「…あの、なんか私なんかしちゃいましたか?」
「いや、なんかそんなことでごめんとかいうなよ。別に怒ってないんだからさ」
「なんだ…そんなこと気にしてくれてたんですか」
「そんなことって俺にとってはすっごい大切なことだから。麗はずっと笑ってればいいから」
そう言って頭をポンポン撫でてくる。
「あの…手…」
「何?俺にこうされるの嫌?」
「いやじゃないけど…っていうかなんか今日おかしくない?熱でもあるんじゃ…」
「ないよ平熱。麗に会えて嬉しいの。俺、これからは遠慮しないから覚悟してね?」
覚悟?なんの?そんなことを思っているとおもっきり障子が開いた。
「待たせちゃってごめんなさい!青葉ちゃん久しぶり!大きくなったわねえ」
そんな風に話しかけてくる人が多分私に術とかを教えてくれる人だと思う。
長い金髪の髪を一本の三つ編みにして白い着物、そして背も高い。多分20代前半くらいだと思う。金にきっと髪を染めてるんだろうけど全く傷んでなくてすごい綺麗だし金髪特有のチャラさも無くてすごく似合っている。そしてなんと言っても南月君に負けず劣らずの美形青年!!南月君はかっこいい感じだけどこの人は綺麗って方が似合ってて神聖な感じで男の人なのに巫女っぽい感じが漂っている。
「なに言ってるんですか。先週会ったばっかりでしょう」
「もう、可愛げがないわね。あっ隣にいるのが麗ちゃん?」
「はい。これからよろしくお願いします」
「そんなかしこまらないで。自己紹介が遅れたけど私は伊集院朔(いじゅういん はじめ)よ。朔って呼んでね。一応、青葉の従兄弟よ」
南月君の従兄弟!確かに目の形が似てるし2人ともすごく顔がいい。
「じゃあ早速訓練をはじめましょう!青葉は隣で見てて。必要になったら言うから」
南月君は「なんか俺の扱い雑じゃないすか」とか言いながらも少し楽しそう。
南月君は朔さんが年上だから気を使って敬語にしているんだろうけどなんて言うか兄弟みたい。

「麗ちゃんは全く分かんないだろうから丁寧に最初から説明していくわね。陰陽師は神様へのイメージで術が使えるの。多分麗ちゃんは北神家の子だから力は強いはずよ。とりあえず祝詞を覚えましょうか」
私は朔さんから一枚の紙をもらい一生懸命覚えた。
「覚えました」30秒経ってそう言うと朔さんと南月君がこっちを振り返った。
「はや!!」朔さんは驚きの声をあげ、南月君は無言だけど珍しく驚いた顔をしている。
「…この数分で覚えたの?」
「はい。記憶力、昔からよかったんですよね」
なんといっても私は記憶力が結構良いのだ。方術学園に入る時も一応、試験みたいなのを受けたんだけど前日に教科書を読んで大体覚えられた。私の唯一の特技かも。
「じゃとりあえず唱えてみて」
私は言われるがままさっき覚えたばかりの祝詞を唱え始めた。
「この国を守護する四神よ。ここにいるのは冬を司る玄武の加護を受ける北神家の民。我が家や民たちの繁栄や平和のためその力を我に持たせたまえ」
スラスラと噛まずに唱え終えると北風のような少し冷たい風が吹いたかと思うと部屋一帯が光に覆われしばらくすると光はおさまった。
「成功よ!今ので麗ちゃんは陰陽師としての加護を受けることができるようになったわ。それにしても凄いわ。さすが北神家の子ね。力が強い。青葉以外でこれくらいの力を持ってる子なんて見たことがないわ。」朔さんは心底驚いた顔をした。
「とりあえず玄武について説明するわね。玄武っていうのは簡単に言うと北の神様よ。麗ちゃんは玄武の加護で術が使えるわ。私は南月家の人間で朱雀の加護を受けてるから玄武についてあまり詳しいわけじゃないんだけど基本的なことは大体一緒よ。イメージするの。玄武は北と冬の神様。麗ちゃんがそこからイメージ出来るものは何かしら?」
北、冬。うーん…
「雪?ですかね」
「雪ね、OK!じゃあ雪のことを強く考えて。麗ちゃんがイメージする雪はどんなものなのかを意識してみて」
雪、雪、ゆき。私が思う雪は冷たいけど色んな人の心を温かく包み込んでくれるような柔らかくて綺麗な雪!!

そう強く考えると雪が私の周りにキラキラと降り出した。
なんか空気が綺麗になったような気がする。
「麗ちゃん、本当に凄いわ!初めてなのにこんなに使いこなしちゃうなんて!じゃあ青葉と一緒に次はやってみて。2人は組だから一緒に任務をすることも多いだろうし。ここからは2人でやってみて」そう言うと離れたところで座っていた南月君が隣に来た。
「俺は朱雀の加護を受けてる。朱雀は南と夏の神様。北神さんの雪みたいに俺にもそうゆうのがあって俺は木の葉っぱ。この二つのイメージを混ぜて連想できるものじゃないと2人で術が使えない」
雪と葉っぱ…全然想像がつかない。ていうか夏と冬って対極じゃん!難しすぎる!
2人で考え込んでいると南月君が「あっ」と声をあげた。
「雪うさぎ」
小さい声で南月君が言った。
ゆきうさぎ…?隣にいた朔さんが堪えきれず笑い出した。
「青葉ったら雪うさぎってっ!ははっ!」
私もつい笑ってしまう。
あの南月君から「雪うさぎ」なんて可愛いワードが出てくるなんて!!
当の本人は少し恥ずかしいそうにしながら「笑うな。これしか思いつかなかったんだよ!」訴えている。
笑いが落ち着いてから話を再開した。
「私も雪うさぎ良いと思う!可愛いし!」
「…じゃあさっきみたいにやってみて俺と一緒に術を使うってことも頭にいれながら」
南月君と雪うさぎ。似ても似つかないな。
あっでも、冬の日に昔青葉君と雪遊びしたな。
東京ではあんまり雪が降らないから大はしゃぎして。その時に一緒に雪うさぎ作ったな。
ほろほろで溶けてしまいそうな雪うさぎに青葉君のあの笑顔。私にとって大切な思い出!!!
その瞬間大きな光が立ち込めた。
「2人ともお疲れ様。なんか雪うさぎが術にあんまり反映されてなかったけど成功してるし2人の考えが一致したのかしら。息ピッタリね!」
2人の考えが一致?そんなはずない。だって南月君は私のことを覚えてないんだから。もしかしたら私じゃない人と雪の大切思い出があるのかも。
きっとそうだ。
…少し寂しいな

それで今日の特訓は終わり車で学校に向かった。
私、本当に陰陽師になったんだ…
今でも信じられない。たった2週間前までは普通の中学生だったのに。
これからも頑張ろう。
今日、南月君が私のことを覚えてないのを目の当たりにして寂しくなった。
原因はこれまでの楽しい日々を全部忘れてしまっていたこともそうだし、私が南月君のことを今も好きだからなんだと思う。
南月君が『これまで』を忘れても私たちには『これから』がある。
私は南月君の婚約者だ。もちろん私たちの間に恋や愛はないけれど私は南月君の隣にいられるんだ。
だからこれから頑張って南月君の隣に堂々と並べるような陰陽師になってこれから楽しい思い出をたくさん作ろう!
そう決心した日だった。