「……なぁ、さやか」
不意に名前を呼ばれて、私はバスの時刻表から顔を上げた。
声の主は、さっきまでコートで暴れ回っていた「自称」エース。今はスポーツバッグの紐をこれでもかってくらい指に巻き付けて、なんだかモジモジしている。
「んー? なに、大樹。さっきの逆転シュートの自慢なら、もう百回は聞いたよ?」
わざと意地悪く言ってみたけど、実は私の心臓もまだバクバクしていた。あんなに必死なアイツ、初めて見たから。
「違うって。……お前、さ。あんなデカい旗、いつの間に作ってたんだよ。アイドルの絵とか、描くのすげー大変だっただろ」
大樹は私と目を合わせない。耳のあたりが、夕日のせいだけじゃなく赤くなっているのがわかって、なんだか可笑しくなった。
「……桜のためだけじゃなくて、俺の応援も、ちょっとは入ってたのか?」
(……あ、ずるい。そんなこと聞くんだ)
私の胸の奥が、少しだけ熱くなる。
桜ちゃんを元気づけたくて作った旗。でも、それを振り回しながら喉が枯れるまで叫んでいたのは、間違いなく目の前にいるこのおバカさんの名前だった。
私は一瞬だけ言葉に詰まって、それからわざと、いたずらっぽく彼の顔を覗き込んだ。
「えー、どうしおっかな。大樹が次の県大会でも、もっとカッコいいとこ見せてくれたら教えてあげてもいいよ?」
「……んだよ、それ」
大樹がパッと顔を背ける。その反応が面白くて、私はついつい、彼のユニフォームの少し汗ばんだ袖を指先で引っ張った。
「嘘だよ。……ありがとね、大樹。最高の試合だった。桜ちゃんも、あんなに笑ってたし」
「……おう。次はもっとすげーの見せてやるよ」
大樹の声が、さっきより少しだけ頼もしく聞こえた。
少し後ろでは、車椅子の桜ちゃんと川澄くんがこっちを見てクスクス笑ってる。
(もう、桜ちゃんまで……!)
恥ずかしくなって前を向いたけど、私の顔もきっと、今の夕陽と同じくらい真っ赤に染まっているんだろうな。
不意に名前を呼ばれて、私はバスの時刻表から顔を上げた。
声の主は、さっきまでコートで暴れ回っていた「自称」エース。今はスポーツバッグの紐をこれでもかってくらい指に巻き付けて、なんだかモジモジしている。
「んー? なに、大樹。さっきの逆転シュートの自慢なら、もう百回は聞いたよ?」
わざと意地悪く言ってみたけど、実は私の心臓もまだバクバクしていた。あんなに必死なアイツ、初めて見たから。
「違うって。……お前、さ。あんなデカい旗、いつの間に作ってたんだよ。アイドルの絵とか、描くのすげー大変だっただろ」
大樹は私と目を合わせない。耳のあたりが、夕日のせいだけじゃなく赤くなっているのがわかって、なんだか可笑しくなった。
「……桜のためだけじゃなくて、俺の応援も、ちょっとは入ってたのか?」
(……あ、ずるい。そんなこと聞くんだ)
私の胸の奥が、少しだけ熱くなる。
桜ちゃんを元気づけたくて作った旗。でも、それを振り回しながら喉が枯れるまで叫んでいたのは、間違いなく目の前にいるこのおバカさんの名前だった。
私は一瞬だけ言葉に詰まって、それからわざと、いたずらっぽく彼の顔を覗き込んだ。
「えー、どうしおっかな。大樹が次の県大会でも、もっとカッコいいとこ見せてくれたら教えてあげてもいいよ?」
「……んだよ、それ」
大樹がパッと顔を背ける。その反応が面白くて、私はついつい、彼のユニフォームの少し汗ばんだ袖を指先で引っ張った。
「嘘だよ。……ありがとね、大樹。最高の試合だった。桜ちゃんも、あんなに笑ってたし」
「……おう。次はもっとすげーの見せてやるよ」
大樹の声が、さっきより少しだけ頼もしく聞こえた。
少し後ろでは、車椅子の桜ちゃんと川澄くんがこっちを見てクスクス笑ってる。
(もう、桜ちゃんまで……!)
恥ずかしくなって前を向いたけど、私の顔もきっと、今の夕陽と同じくらい真っ赤に染まっているんだろうな。



