病院の窓から見える景色が、少しずつ冬の気配を帯びてきた。
私はまだ、あの日以来学校には戻れず、白いベッドの上で一日を過ごしている。
ガラッ、と勢いよく病室のドアが開いた。
「よっ、桜! 息災か!」
大きな声とともに現れたのは、バスケ部のユニフォームをエナメルバッグに詰め込んだ夏目くんだった。その後ろから、少し困ったような顔の川澄くんと、お見舞いのフルーツを持ったさやかちゃんも続く。
「夏目くん、静かに。ここ病院だよ」
私が苦笑いすると、夏目くんは「おっと」と口を押さえたが、その瞳はいつになく真剣だった。
「あのさ、桜。来週、地区大会があるんだ」
夏目くんが、クシャクシャになった大会のトーナメント表を私のベッドの上に広げた。
「俺、自称エースとか言ってたけどさ……本当は、お前にまだちゃんと試合見せたことなかっただろ?」
「夏目くん……」
「俺、絶対勝つから。お前が学校に戻ってくるまで、勝ち進んで県大会まで連れてってやる。だからさ……来週の土曜、もし先生の許可が出たら、見に来てくんねーか?」
夏目くんは頭を掻きながら、まっすぐに私を見た。
「お前が客席にいてくれたら、俺、多分今の三倍は動ける気がするんだよ」
横で黙って聞いていた川澄くんが、静かに口を開いた。
「……俺も、車椅子押してでも連れてってやりたいと思ってる。瑞波さん(お姉ちゃん)にも、主治医の先生にも、俺が頭下げて頼んでみるから」
さやかちゃんも私の手を握りしめる。
「桜ちゃん、無理は禁物だけど……みんなで桜ちゃんの旗、作ったんだよ? 『不屈のアイドル・桜』って。これ、会場で振らなきゃでしょ?」
みんなの優しさが、胸の奥に灯をともしてくれる。
余命宣告を受けた私の毎日は、明日が来るのが怖くなることもある。でも、みんなが「未来の約束」をくれるから、私はまた前を向ける。
「……うん。行きたい。夏目くんのシュート、一番近くで見たいな」
私が答えると、夏目くんは「よっしゃあ!」と、今度こそ看護師さんに怒られるくらいの大きな声でガッツポーズをした。
「待ってろよ、桜! 最高にカッコいいエースの姿、焼き付けてやるからな!」
窓から差し込む夕日が、みんなの笑顔をオレンジ色に染めていた。
来年の春までのカウントダウンじゃない。
来週の土曜日までの、楽しみなカウントダウンが始まった。
私はまだ、あの日以来学校には戻れず、白いベッドの上で一日を過ごしている。
ガラッ、と勢いよく病室のドアが開いた。
「よっ、桜! 息災か!」
大きな声とともに現れたのは、バスケ部のユニフォームをエナメルバッグに詰め込んだ夏目くんだった。その後ろから、少し困ったような顔の川澄くんと、お見舞いのフルーツを持ったさやかちゃんも続く。
「夏目くん、静かに。ここ病院だよ」
私が苦笑いすると、夏目くんは「おっと」と口を押さえたが、その瞳はいつになく真剣だった。
「あのさ、桜。来週、地区大会があるんだ」
夏目くんが、クシャクシャになった大会のトーナメント表を私のベッドの上に広げた。
「俺、自称エースとか言ってたけどさ……本当は、お前にまだちゃんと試合見せたことなかっただろ?」
「夏目くん……」
「俺、絶対勝つから。お前が学校に戻ってくるまで、勝ち進んで県大会まで連れてってやる。だからさ……来週の土曜、もし先生の許可が出たら、見に来てくんねーか?」
夏目くんは頭を掻きながら、まっすぐに私を見た。
「お前が客席にいてくれたら、俺、多分今の三倍は動ける気がするんだよ」
横で黙って聞いていた川澄くんが、静かに口を開いた。
「……俺も、車椅子押してでも連れてってやりたいと思ってる。瑞波さん(お姉ちゃん)にも、主治医の先生にも、俺が頭下げて頼んでみるから」
さやかちゃんも私の手を握りしめる。
「桜ちゃん、無理は禁物だけど……みんなで桜ちゃんの旗、作ったんだよ? 『不屈のアイドル・桜』って。これ、会場で振らなきゃでしょ?」
みんなの優しさが、胸の奥に灯をともしてくれる。
余命宣告を受けた私の毎日は、明日が来るのが怖くなることもある。でも、みんなが「未来の約束」をくれるから、私はまた前を向ける。
「……うん。行きたい。夏目くんのシュート、一番近くで見たいな」
私が答えると、夏目くんは「よっしゃあ!」と、今度こそ看護師さんに怒られるくらいの大きな声でガッツポーズをした。
「待ってろよ、桜! 最高にカッコいいエースの姿、焼き付けてやるからな!」
窓から差し込む夕日が、みんなの笑顔をオレンジ色に染めていた。
来年の春までのカウントダウンじゃない。
来週の土曜日までの、楽しみなカウントダウンが始まった。



