あの日、君と見た桜色

​翌日、桜がおずおずと教室へ向かうと、そこにはいつも通りの、いや、いつも以上に賑やかな光景があった。
​「あ、桜! お前、看板のデザインまだ終わってねーぞ!」
夏目くんがわざとらしく明るい声を出す。
「もう、大樹はデリカシーがないんだから。……桜ちゃん、無理しなくていいからね。私たちのメニュー、最高にしよう?」
さやかちゃんが優しく微笑み、桜の席に温かいココアを置いた。
​そして川澄くんは、少し照れくさそうに目を逸らしながら呟いた。
「……当日、お前の料理、一番楽しみにしてるから。だから、絶対一緒に成功させようぜ」
​桜の目から、一筋の涙がこぼれる。
前の学校では「いじめ」という孤独の中にいた。けれど今は、自分の帰る場所がある。
​「うん……。みんな、ありがとう」
​消えゆく命の灯火。けれど今の桜には、その火を最後まで明るく燃やし続けたいと思える理由ができていた。