はじめてをくれた君と、最後を選んだ君

──校舎を出て、門へ向かう道。


「寒っ…」
 


「これ、着てな」


先輩が自分の肩にかけていた、サッカー部のロゴ入りの厚手のパーカー。


それをバサッと私の頭から被せた。


「え、でも先輩が寒くなっちゃう」


「乃々華に風邪引かれるよりマシ。それに、それ着てれば『俺の女』って一発でわかるから」


  さらっと、独占欲全開なことを言う。


「似合うじゃん」


「ありがとう」


「ちょっと部室寄ってもいい?」


先輩に手を引かれて、誰もいない部室へ。



「今日、部活休みですよね?」



「顧問に鍵借りてるから大丈夫。二人きりになりたかったし」
 


部室特有の、少し籠もった熱気。

先輩はパイプ椅子に座った私の前に膝をついて、私の手をギュッと握った。


「....乃々華。さっき、廊下で誰と話してたの?」
 


 (っ、見てたんだ、)



「クラスの子。沙羅の幼馴染の晃雅だよ」

 
先輩が私の腰に腕を回して、顔を埋めるようにギュッと抱きついてきた。


「……シオン先輩?」


「俺の前で、他の男とあんまり楽しそうにしないで」

「え、」

 
「嫉妬、してる。俺のことだけ考えてほしい」
 

耳元で、先輩の少し荒い呼吸が聞こえる。
 





「ねえ、乃々華」


「あいつのこと、忘れさせてあげようか?」
 

 顎をクイッと持ち上げられて、鼻先が触れる。



「俺のこと、ちゃんと見て。今、俺しかいないでしょ?」








……そう言われてるのに、
どうしても、違う顔が浮かぶ。





大切にされてる。

ちゃんと、優しくされてるのに。

 
 なのに──
頭に浮かぶのは、
 

 『あいつに泣かされんなよ。……俺以外』


さっきの声が、離れない。


胸の奥が、落ち着かないまま揺れてる。


  (……なんで、今それ思い出すの)

 

目の前にいるのは、シオン先輩なのに。

 

「……見てるよ」

 

やっと絞り出した声は、自分でも分かるくらい、
  少しだけ嘘っぽかった。