好きになった人は、みんなのアイドルで 2

「……ごめん、朝から泣いて」
「ううん、落ち着いた?」
「……うん」

鼻をグズグズさせながら頷くと、ぎゅっと抱き締められる。

「待って、鼻水ついちゃう」
押しのけようとすると
「紬ちゃんの鼻水ならついてもいいよ」
と力いっぱい抱き締められる。

……どうして、この温もりを疑ってしまうんだろう。
悠太郎くんは、私のことが好き。
邪魔なんて思ってない。
頭では、そう分かるのに。

ぎゅっと抱き締め返す。

「……今日は、俺の家に来る?」
「え?」
「洗濯とかしたいし、次また行く準備もしなきゃだから、家には帰るけど……紬ちゃんさえ良ければ」
私が泣いたの、離れたくないからだってバレてる。

「……今日バイト」
「じゃあ、迎えに行くから今日は俺の家に帰ろ」
「……バイト行くのに、大荷物になっちゃう」
行きたくないわけじゃないのに、変な言い訳をしてしまう。

「何も要らなくね?俺のスウェット着て寝ればいいじゃん」
「……メイク落としとか」
「紬ちゃん、忘れた?俺、アイドル。メイク落としあるよ」
「……明日すっぴんで帰るのやだよ」
「なんと、一通り化粧品もあります」
「……明日の着替え」
「そればっかりはどうにもならないかー!じゃあさ、今度は持ってこなくてもいいようになんか置いてってよ」
今度。……今度があるんだ。

「……今度、バイトじゃない日に持ってく。明日は、今日着た服そのまま着て帰る」

「じゃあ、決まり」
「ずっと一緒にいよ」

"ずっと"が、ずっとじゃないから、一緒にいようと思った。