好きになった人は、みんなのアイドルで 2

悠太郎くんを見送って、私も実家に帰ることにする。
どうせ、悠太郎くんいないし。

ーー
お母さんが仕事終わりに駅まで迎えに来てくれるって言うけど、少し仕事が伸びてるらしい。
時間つぶしに本屋に寄る。

……韓国語、勉強しようかな。

悠太郎くんが韓国でデビューするなら、私も韓国語が分かった方がいい。
……第二外国語、なんで私ドイツ語にしちゃったんだろう。

ーー
「ごめんね、お待たせ」
「大丈夫だよ、本屋見てたから」
お母さんが車で迎えに来る。

「なんか買ったの?」
「うん、ちょっとね」

……お母さんに、悠太郎くんのこと、話そう。
「……韓国語の本、買ったの」
「韓国語?紬、韓国に興味あるの?」
「……興味あるって言うか……あのね、こないだ帰ってきた時、付き合ってる人がいるって言ったじゃん?」
「うん」
「……その人、アイドル目指してる人なの」
「アイドル?」
「こないだ、オーディションに受かって、今韓国にいる。だから、私も韓国語勉強しようと思って」

お母さんの言葉を待たずに喋る。
「反対とか、しないでね。お母さんは、私が普通の人と結婚して、普通に幸せになるの、考えてたかもしれないけど……、私もそういうの想像してたけど、好きになった人、アイドルになる人だったの」
息継ぎもせず、一気に話す。

後部座席に乗っているから、運転するお母さんの顔は見えない。

「……大変だと思うよ。」
ポツリとお母さんは言う。

「……紬には、なるべく嫌な思いとか大変な思い、しないでほしいってお母さんは思っちゃうけど」
「でも、紬がその人のこと、本当に好きならお母さんは応援する」

「……ありがとう。……本当に好きなの。悠太郎くんのためなら、韓国行ってもいいって本気で思ってる」
口に出して自分でもびっくりする。
そんな覚悟、まだできてない。でも。

「それは……お仕事どうするのとか、韓国に住むの寂しいとか、色々心配になっちゃうけど、まだ卒業まで時間あるし、ちゃんと考えていったらいいんじゃない?」

「……うん」
「ごめん、ちょっと勢いで言った」

「紬の気持ちは伝わった」
お母さんが笑う。
「ていうか、アイドルになる子ならかっこいいの?お母さんに写真見せなさいよ」

「家着いたら見せるね」

悠太郎くんのこと、お母さんに話せて良かった。
内心どう思ってるか分からないけど、反対もされなくて良かった。

これで、堂々と悠太郎くんを好きでいれる気がした。