好きになった人は、みんなのアイドルで 2

「ねえ、着てもいい?」
「うん、いいよ。むしろ着てみて?サイズ合わなかったら調整するし」

悠太郎くんが着ていたニットを脱いで、私が編んだセーターを着る。

「……似合う」
部屋に置いてある全身鏡のところへ悠太郎くんがパタパタと見に行く。
「……ほんとだ。サイズも合ってるし、色もめっちゃ良い。やっぱ毎日着るわ」
「……セーターのこと、休ませてあげて」
悠太郎くんが喜んでくれて嬉しい。

戻ってきて「紬ちゃんありがと」
と今度は後ろから抱き締められる。
悠太郎くんの顔がすぐ近くにある。
ちゅ、と頬にキスをしたら、
「なに、紬ちゃんからしてくれるとか、なに、もっかいやって」
って強く抱き締められる。
「……恥ずかしいから無理」

こんな時間が、ずっと続けばいい。

「……ねえ、紬ちゃん、話あるんだけど」
後ろから抱き締めたまま、悠太郎くんが話し始める。
「ん?……別れ話?」
前に勘違いして泣きじゃくったことを思い出して少し笑う。
「……もちろん違うけど、紬ちゃんにとっては、良くない話かも」
抱き締めていた手が離れて、私の横に座る。

きっと、悠太郎くんにとっては良い話だ。
それなら……私にとっても良い話。

「俺、最近練習増やしてたの、オーディション受けてたからなんだ」
「……碧と一緒に、韓国の事務所のオーディション受けてた」
「それで……受かった」

「え!おめでとう!」

「……韓国の事務所に所属することになるから、練習も、韓国ですることが多いんだ」
「だから……会えなくなる」
「大学も、休学するかも」

「……分かった」

「ごめん、会えなくなるって、なかなか言えなくて」

「ううん、頑張ってきて」
本心だった。
会えなくなるの、そりゃ寂しいけど、悠太郎くんが夢に近付けるならいくらでも我慢しようと思った。

「私は大丈夫。頑張ってきて」
……あれ、大丈夫なはずなのに。
涙が1粒落ちた。

悠太郎くんが「ごめん」と呟いて抱き締めてくれる。
「……ごめん、ほんとに、ほんとに応援してるの。でもごめん、ちょっと寂しい」
「……俺も」

「でも、デビューするから。紬ちゃん、見てて」

顔は見えなかったけど、たぶん、私の一番好きな顔をしていた。