全部奪われた私を拾ったのは極道でした

 車のドアが閉まる音が、やけに大きく響いた

 見知らぬ車内

 静かすぎて、息をするのも怖い

柚葉:「……」

 何を話せばいいのか分からない

 隣に座る男――要さんは、前を見たまま何も言わない

柚葉:「あの……」

 勇気を振り絞って声を出す

要:「……」

 返事はない。

 けれど、聞こえていないわけじゃない

 ただ、“必要がないから話さない”だけ

 そんな空気だった

 それ以上、何も言えなくなる

 沈黙が続く

 でも、不思議と――嫌じゃなかった

 しばらくして、車がゆっくりと止まる

要:「降りろ」

柚葉:「……ここ?」

 目の前にあるのは、大きな建物