Something Blue


次の日は、GW(ゴールデンウィーク)明けの5月上旬であることを疑ってしまいそうなほど暑かった。

防寒のために羽織っていた薄手のパーカーをリュックに押し込み、(ひたい)にじんわり(にじ)んだ汗を手の甲で(ぬぐ)う。

『間もなく3番ホームに、8時47分発新快速E駅行きが参ります。危ないですので、黄色い点字ブロックまでお下がりください。』

3番ホームの電光掲示板に目を向けた瞬間、ズボンのポケットに入っていたスマホがぶるりと震えた。

【ひより(葉口) 3号車なう もうすぐU駅】

数年前に撮った適当な夕日の写真のホーム画面に、通知がポップアップする。

『OK』のスタンプを送ろうとLINEを立ち上げると、そこでちょうど3番ホームに新快速がすべりこんできた。

僕の視界を薄く覆う前髪が、風圧でわずかになびく。

目の前で開いたドアの中に足を踏み入れると、じんわりと湿った空気が僕を包み込んだ。

いつも僕が通学で利用している7時38分の電車より、幾分息がしやすい。

床に小さく息を落とし、僕はドアの上のディスプレイに顔を向ける。

画面に大きく映し出された路線図と、その下の塾の広告の右に、『現在の号車:3号車』の表示があった。

【3号車なう】

緋由からの連絡を思い出す。

車内をぐるりと見渡すと、隣の車両へと繋がるドアの近くに、見覚えのある茶色い頭が見えた。

通路を埋め尽くす乗客たちに頭を下げて道を通してもらい、緋由の肩を軽く叩く。