サクラソウの約束


「あんたら決まらんねやったら、隣の人とハート作って!」

フリーポーズの話し合いが平行線に突入したところで、体育館の壁に寄りかかって腕を組んでいた見原が声を張り上げた。

ざわざわと混乱が広がりはじめたところで、「隣のクラスに迷惑かかるから早く撮影すんで!」と、クリップボードを叩く音と見原の声が重なる。

僕は恐る恐る右手を伸ばし、左隣の女子とハートを作った。

手持ち無沙汰ではないのに手持ち無沙汰になった左手をぷらぷら揺らしていると、「…ねね」と小さな声が僕を呼んだ。

「やんないの?」

息遣いを感じる彼女の小さな声が、耳から入って僕の指先まで静かに満たしていく。

織宮さんが伸ばした右手と、僕の左手を合わせ、ハートを作る。

指先に身体中の全ての血液と鼓動が集まったかのように、その部分が熱く脈打っている。

笠原(かさはら)ー!結羽(ゆわ)の顔隠れてるからなんとかしたって!」

見原の指示に従い、少し膝を曲げて彼女と手の高さを揃える。

間も無くシャッターが切られ、白いフラッシュが体育館に瞬いた。