「名簿順に並んでー!…浅野、もうちょい左いって!」
黒いクリップボードを持った見原が、よく通る声で指示を飛ばす。
僕たち1年D組の生徒たちは、ステージ上のひな壇で見原の指示に従って位置を微調整していく。
調整が終わったのか、見原が赤いウィンドブレーカーを着た若い女の人に何か話しかけている。
「撮りますよー!1+1はー?」
見原が壁に寄りかかり、その女性が三脚に立てたカメラを調整しながら快活な声で僕たちに笑顔を促した。
『にぃー!』『さん!』
誰かがふざけて言い放った『さん!』にどっと笑いが湧く。
「おい誰やねん、3って言ったんは!…あんたらほんまに高校受験突破したんか⁉︎」
見原のツッコミに、さらにクラスが笑いに包まれる。
さりげなく右に視線をやると、口元を押さえてわずかに肩を揺らす織宮さんの横顔が視界に入った。
わずかに緩められた、淡くくすんだバラ色の唇に、頬に放射状の影を落とす長い睫毛。
圧倒的な何かに圧倒されて、その様子をぼんやり見てしまう。
「次フリーポーズで撮ってくださーい」
ウィンドブレーカーの女性の声で我に帰ると、僕の周りはいつの間にか騒がしくなっていた。



