「それやったカウントせんやろ」
僕の思ったことを、悠が忌憚なく代弁してくれる。
その時、前の席の主――織宮さんがパン片手に教室に戻ってくるのが視界に入ってきた。
すとんと腰をおろした織宮さんが袋からクロワッサンを取り出して、小さくかじる。
そして、黒いブレザーに降りかかった茶色いクロワッサンの雪を右手で払う。
たったそれだけの出来事が、目の前で行われているはずなのにテレビのように遠く感じてしまう。
お弁当の存在を忘れてぼんやりしていると、誰かが手を叩く音で現実に引き戻された。
「笠原ー、生きてるかー?」
悠が僕の顔の前で手を振り、織宮さんのクロワッサンから彼の手へとぼんやり焦点が合っていく。
「生きてるよ、勝手に殺さんといて」
何を誤魔化しているのかわからないまま、僕は何かを誤魔化すように弁当の中のふりかけご飯をかき込んだ。



