僕の声に、数歩先の織宮さんが足を止めて振り向く。
ちょうど計ったかのように、駅前広場に風が吹き抜けて僕と織宮さんの髪を揺らす。
「どーしたん?」
さらりとした織宮さんの表情が、僕の口を押し開く。
「あ、いや…まあ、うん」
『好き』というたった2文字が言えずに、当たり障りのない処世術のような言葉だけが溢れてくる。我ながらめちゃくちゃ情けない。
「ふーん」
こつこつとローファーを鳴らしながら、織宮さんが近づいてくる。
眉を顰めて目を細めた彼女の表情が視界に入ってきた瞬間、僕の心の中で密かに警報が鳴り始める。



