「日和ー!」
論理表現の教材類をロッカーに持っていこうと席から立ち上がった瞬間、誰かに肩を叩かれて我に帰る。
「一緒食べよーぜ」
そこには、菓子パンをどっさり抱えて満面の笑みを浮かべた僕の友人――葉口緋由が立っていた。
「おー」
適当に返答し、母親が作ってくれた弁当をカバンから取り出すと「俺もいい?」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「悠か。いーぜ」
緋由が快く承諾する声を背後に、弁当箱を机に置く。
僕の弁当が置かれていた机に、緋由の菓子パン、坂倉の唐揚げパンとトルネードポテト、缶のコカコーラが置かれる。
昼休みはだいたい、僕の右隣の席の男子――坂倉悠と、緋由とご飯を食べる。
「お前まじで唐揚げパンしか食わねーじゃん。見原に『脂質の取りすぎや』って言われんぞ」
「あーあー聞こえませーんるーらららー」
緋由が焼きそばパンを食べながらそう指摘すると、坂倉が露骨に耳をふさいで体を揺らす。
僕は弁当の中からいつもの甘い卵焼きを取り出し、口に運ぶ。
「ふぇはふぁふぁ、ふぁふひ」
唐揚げパンを口いっぱいに頬張った坂倉が、腕を伸ばして緋由の肩をつつく。
「一旦飲み込め悠」
緋由が坂倉の肩をつつき返して、冷静にツッコむ。
しばらく口をもごもご動かしてから、坂倉が「てかさ葉口、お前英コミュのテスト大丈夫なん?」と言葉を発した。
「大丈夫っしょ。昨日5分やったし」
それはやった扱いにならない、とツッコもうと口の中の唐揚げを急いで飲み込む。



