『次はS駅、S駅です。お出口は左側です』 織宮さんを連れて、逃げるように隣の車両に向かった後。 「あの…」 車内アナウンスと、織宮さんの声で我に帰って振り向く。 「――――た」 電車が減速を始め、車輪と線路がこすれる甲高い音が車内に響き渡る。 「なんか言った?」 「あとで言うね」 織宮さんの黒髪が、彼女の笑みに合わせてさらりと揺れる。 扉が開く時の、ぷしゅーっと間抜けな音に合わせて、僕の中で膨らんだ緊張が静かに抜けていった。