Something Blue


高校の最寄り駅であるK駅にたどり着き、定期を入れた黒いパスケースをかざして改札を通過する。

電光掲示板で発車時刻を確認してから、3番ホームにつながる階段を駆け降りる。

駆け込み乗車はおやめくださいと言われているが気にせず、ホームで発車時刻を待っていた電車に乗り込む。

ギリギリ帰宅ラッシュを回避できたとはいえ、補習があったせいでいつもより遅い電車だから車内は少し混んでいた。

『混ざってこいよ』

『俺とおりみやさん、インスタ相互』

悠のメッセージが、彼の声で脳内再生された。

できたばかりのかさぶたを強制的に剥がされ、薄く脆くなっているところに素手で触れられたようなひりついた不快感が僕の腕をそっと撫でる。

何度もリフレインする悠の声から逃げるように、僕は吊り革を手放して隣の車両に移動した。

いつのまにかじっとりと湿っていた手のひらは、吊り革を離して空気に触れたせいでやけに寒い。

「なあ、君高校生?」

吊り革を掴んだ瞬間、右から聞こえてきた不自然なくらい柔和な声が僕の鼓膜をやけに大きく震わせた。

声の方に振り向く。

見覚えのある陽光館(ようこうかん)高校の制服に、真っ黒で艶やかなミディアムヘア。

僕からその姿を隠すように立っている男のせいで顔はよく見えない。けど、誰なのかは嫌でもわかってしまった。