Something Blue


「…遅いぞ」

黒い実験用の机に広げたかっぱえびせんをボリボリと噛み砕きながら、化学教師の島田が僕たちをちらりと一瞥する。

「えーと…笠原はサイエンスプラスのp.15の答え合わせ、坂倉は電子配置表のプリントが未提出な。」

かっぱえびせんの油がついた左手で黒いクリップボードの中のプリントをめくりながら、島田が続ける。

「終わったら先生のとこ持ってきて、OKもらったら各自勝手に帰ってもらって結構でっす」

やる気の『や』の字も感じられない態度でボリボリとかっぱえびせんを(むさぼ)る島田からそっと視線を外す。

「ちょ、ここまじで答えなんなん?」

「この前の小テストで出てたやん、2族はアルカリ金属元素ね?」

梨乃(りの)それちゃうって、2族はアルカリ土類(・・)金属元素な?」

化学室の隅の机を占領しておしゃべりに花を咲かせる女子3人組から少し離れた位置に荷物を下ろす。

「笠原ー、俺の分の椅子もよろしくー」

部屋の後ろに乱雑に積まれた椅子から適当に一脚拝借して戻ろうとすると、悠がガラス窓を鏡代わりにして髪を整えながらそう言い放つ。

椅子をもう一脚拝借して戻ると、今度はスマホの内カメで髪を整えていた悠が「あーっす」と気の抜けたお礼を言ってくれた。

突っ込む気力もなく、僕は空気椅子で浮いた悠のお尻の下にそっと椅子を滑り込ませる。