Something Blue


「化学基礎の島田(しまだ)先生から未提出者補習の連絡が来てます。誰とは言わへんけど、対象の人はちゃんと補習に参加してやー」

終礼で、見原から容赦なく告げられる連絡事項を右から左に聞き流し、バレないようにこっそり窓の方に視線をやる。

「はぁ…」

2時間目の席替えで手に入れた、窓際の一番後ろから見える空は僕の気分とは正反対に淡く晴れている。

せっかく好きな人と帰れたのに気まずくしてしまい、そしてバイトでミスしまくり、席替えで好きな人と離れ、その挙句(あげく)、化学基礎の補習で放課後まで残らされ。

ひとつひとつはそこまで重くない『嫌なこと』も、重なれば押しつぶされそうになる。そういうのはちりつもだ。

「…じゃあ、連絡終わりです!号令係、最後挨拶して」

適当に挨拶をし、僕はカバン片手に廊下に出る。

笠原(かさはら)補習?」

「うん」

体を傾けて僕の視界に強制的に入ってきたのは、悠だった。

「俺も補習。ちょ、一緒行こ」

彼の有無を言わさぬ雰囲気に巻き込まれ、僕はそのまま悠と並んで階段を降りる。

「あ」

化学基礎の教材をロッカーに置きっぱなしにしてしまっていることに気づいて立ち止まると、悠が僕の2歩先で足を止めた。

「どしたん」

「化学のやつ、全部ロッカーに置きっぱ」

僕の言葉に、悠がカバンをガサガサと漁り始める。

「俺もやわ。…戻るかー」

諦めたように(きびす)を返す悠を早々に追い越し、僕は今日一番、いや今月一番のため息を落とした。