Something Blue


「お前顔死んでんやん」

翌日の火曜日。

1時間目の体育が終わり、教室で制服に着替えているとすでに着替えを済ませた緋由が僕の背中を叩いてきた。

「生きてるし」

そう言い返したが、僕の顔が死んでいるのは僕自身が一番よくわかっている。

昨日織宮さんと一緒に帰ったのはいいけど、気まずくなって置いてけぼりにしてしまった。

その後のバイトでは罪悪感からかミスしまくって店長に心配され、今朝のSHR(ショートホームルーム)で席替えのくじを引いた。

そして僕は、織宮さんの後ろというささやかな特等席を失った。

正直僕は織宮さんが近くにさえいればアリーナ席でもいい。

『神席までは望んでいない、好きな人と近くになりたい』

そんな僕のささやかな願いすら叶わず、彼女は廊下側の一番後ろの席になった。体を後ろに倒して全力で右に向けば横顔が見えるかな、というくらいの距離感だ。

顔が死ぬ要因は十分すぎるくらい揃っている。

「次の歴史総合で荷物持って移動やって!」

遠足前の小学生のようなテンションで最悪なニュースを運んできた男子生徒を睨みたくなったが、彼に罪はない。

「あーもう最悪や、クソアリーナ席ー」

ロッカーから歴史総合の教材を出そうと廊下に出ると、緋由が僕の肩を情けなく掴んできた。

「お前窓際の一番後ろやろー、孫の代まで恨んでやるー」

「はいはい」

泣きついてくる緋由の手をほどき、今にも中身が襲ってきそうなロッカーから歴史総合の教科書とノートを引っ張り出す。

何度も倒れてくる体育館シューズを手で押さえながら力任せに扉を閉めて、さっさと教室に戻る。

歴史総合の教材を置いて席に座って顔を上げると、黒板の端に貼られた化学基礎の未提出者補習の連絡プリントが視線に入ってきた。

『放課後、1F化学室に来るように』という威圧感たっぷりな12文字の下に書かれた補習者リストの中に、『笠原』の字を見つける。

「っはぁー…」

僕は織宮さんが目の前にいないのをいいことに、盛大なため息をついた。