Something Blue


「今日バイト?頑張れよ」

廊下に置かれたロッカーに教材類をしまっていると、目が痛くなるほど鮮やかなオレンジ色の練習着を着た緋由が肩を叩いてきた。

「ありがと。そっちも部活頑張ってや」

今にも雪崩(なだれ)が起きそうな教科書たちを押さえながら、勢いよくロッカーの扉を閉める。

「また明日〜」

カバンについたユニフォーム型のキーホルダーを揺らしながら隣のクラスに向かう緋由の後ろ姿を見送り、僕は南階段に向かう。

階段を駆け下り、2階にある職員室の扉の前で荷物を下ろして息を整える。

パンパンに膨らんだクリアファイルから、5時間目の現国でこっそり内職して仕上げた練習シートを取り出す。

「失礼します、1年D組の笠原日和です。見原先生はいらっしゃいますか」

一息にそう言うと、職員室の奥の方でパソコンを操作していた見原が気づいて僕の方に近づいてきた。

「…遅いで、ちゃんと提出しなさい」

僕が差し出した本文シートをちらりと一瞥(いちべつ)した見原が、ふと何かに気づいたかのように顔を上げる。

「右か左寄って」

見原の指示通り左に身を寄せると、空いたスペースに、茶封筒を胸に抱えた織宮さんがさっと通った。

「結羽、それ中田(なかた)先生に渡しとけばいい?」

「はい、お願いします」

見原と織宮さんがしゃべっているところから目線を外し、帰ろうと(きびす)を返す。

「次はちゃんと期限守って提出しーや」

職員室に響いた見原の声が僕を引き留める。

「さよーなら」

いつの間にか僕の横に立っていた織宮さんの声が、職員室に反響してすっと僕の耳に入ってくる。