サクラソウの約束


「What do you do in your free time?(あなたは暇な時、何をしますか?)」

プリントに一度目を落としただけの織宮さんが、何の躊躇(ためら)いもなくすらすらと僕に問いかけてくる。

「あー、えっと… I often play games.(僕はよくゲームをします。)」

「What do you do in your free time?」

僕がぎこちなくそう問い返すと、「I usually read books.(私はよく本を読みます。)」と、淀みなく返ってきた。

話すことがなくなり、何となく(うつむ)くと「お互いに聞くだけじゃなくて、何でかとかを聞いてくださーい」と教卓から指示が飛んできた。

「えっと… Why do you like play games?(なぜゲームをすることが好きなんですか?)」

どう質問すればいいのか分からなかったところに、織宮さんからの質問。

「あっ、Because It’s fun.(楽しいからです。)」

食い気味に返答してしまい、心の中で反省していると、くすりと小さな笑みが僕の耳朶(じだ)を打った。

忘れていたはずの熱が再燃し、膝の上で絡ませた人差し指に視線を移動させる。

ちょうどそこで4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り、隣の教室の椅子を引く音がひどく遠く他人事に聞こえてきた。