Something Blue


「今回は縦ペアで相互採点して!」

4時間目の英コミュは、空腹と睡魔と昼休み間近のふわふわが混ざって不思議な空気になっている。

「えー、前のスクリーンに解答出すので見えんかったら言ってください」

その見原の指示に、織宮さんが振り返ってテストの答案用紙をそっと僕に渡してくれた。

壊してはいけない貴重な美術品を扱うような手つきで、僕はそっと彼女の答案を表に向ける。

練習シートの字よりも整った右上がりの字と、前のスクリーンに映し出された解答を照らし合わせ、いつもより丁寧に丸をつけていく。

「答案の右上に点数、右下に採点者の名前書いてください!本文抜粋テストちゃうから1問1点、10点満点で採点してやー」

1年D組の教室にボールペンと紙が擦れる音が満ち始めた頃、再度見原の指示が飛ぶ。

指示に従って点数を書き込もうと答案用紙の右上にペン先を置いたとき、ふっと手が止まった。

クラスメイトたちが無心でペンを動かしているのに、僕だけがその流れに取り残される。

「そろそろミラーリング切るでー、採点終わったらさっと返してあげてー」

見原の指示で我に帰り、急いで点数と自分の名前を書いて織宮さんに答案を返す。

「ありがと」

いつもと変わらないはずの織宮さんの笑みが、なぜか僕だけに向けられているようで面映(おもはゆ)い。

織宮さんの名前の横に書いた『10』、答案の右下に書いた『笠原日和』がリフレインし、見原の指示がろくに入ってこない。

視線を落とせば、僕の答案にある、織宮さんの『6』と『織宮結羽』。

いつもの僕よりも悪い点数のはずなのに、織宮さんに採点してもらったというだけで、世界が1トーン明るいような心地に包まれた。