Something Blue


校外学習明け、土日を挟んだ月曜日。

南階段を上がり、1年D組の教室がある3階にたどり着くと、全ての音を吸い込んでしまったかのような静寂が僕をそっと迎えた。

薄暗く静まり返った廊下に、僕の足音だけが大きく反響する。

電気がついていない教室の前に立ち、誰もいないであろう教室にわずかな期待を込めて扉を開ける。

「あ、おはよ」

一番乗りだと思っていた教室には、織宮さんがいた。

机の上で広げていた単語帳の間に指を挟んで閉じ、僕にさらりとした表情を向ける。

「…おはよ。早いな」

荷物を下ろし、机の木目をひとしきり見つめてからその一言だけを口にのせる。

「今日アクティブワードのテストやから、学校で勉強しよっかなーって思って」

薄い青緑の単語帳をぱらぱらとめくりながらこともなげに言う彼女の横顔で、テストの存在を思い出した。

「英コミュのテストって今日?火曜じゃなかったっけ?」

「火曜は論表やで?」

後ろの連絡黒板をちらりと見やった織宮さんが、ふっと眉を下げて口元を緩める。

「てことは練習シート提出?」

英コミュの単語テストの前には、必ず範囲の単語を書いた練習シートを提出しないといけない。

うちのクラスの担任――見原は英コミュ担当なので、手を抜くと色々まずいことになりそうだ。

「そりゃうん。私昨日やんないで寝落ちしちゃったから結構急いでる」

そう言った織宮さんの手は、言葉通りせかせかと動いているが、書いている字は割と綺麗だ。

「おっはよー、日和」

練習シートを入れていたであろうパンパンに膨らんだクリアファイルを漁っていると、後ろから緋由が声をかけてきた。

「おはよ。今日英コミュテストらしいけどやった?」

「そりゃやってない」

そう言い放ってからりと笑った緋由の頭を、手に持ったクリアファイルで軽く叩く。

「なんか今地味に痛かったねんけど。暴力反対暴力反対ー」

「つつかんといてよ」

当事者から見てもバカみたいだとわかる会話に、織宮さんの笑いがふわりと重なる。

校外学習の疲れと月曜日の憂鬱なんて、彼女の笑みだけで一瞬でどこかに吹き飛んでしまった。