Something Blue


――『間違えて多く持ってきちゃって…よかったら、使ってください』

織宮さんの声に、緋由の邪気のない笑顔が重なる。そして、ジリっと胸を焦がす嫉妬も。

――『手汗やばかったら、ごめんなさい』

さらりと冷たい、織宮さんの華奢(きゃしゃ)な手の感覚が僕の左手に蘇る。

フープリレーが終わって、織宮さんの手をそっと離した時の心許(こころもと)なさも。

――『お似合いじゃね?』

悠の一言がリフレインする。

「各クラス、元いた位置に、名簿順で並んでください!」

きんとハウリングした声で我に帰り、僕はなんとか人をかき分けてD組の中の集団に入る。

たかが名簿順、されど名簿順。

前に座る織宮さんが、髪を何度か耳にかけ直している。

その動きに合わせて、今日の朝からわずかに感じていた静かな花の匂いが僕の心を満たす。

胸をちくりと刺す嫉妬、織宮さんの手の温度、彼女の手を離した瞬間の心許なさ、悠の鋭すぎる一言。

その全てが薄いカラーセロファンのように重なり、僕の心に複雑な感情――『恋』の1文字をふわりと浮かびあがらせた。