「お前さぁ…」
フープリレー終了後。
織宮さんと繋いでいた左手の熱が抜け切らないまま、ぼんやりとビブスを脱いでいると後ろから悠が声をかけてきた。
いつもと変わらない声に、今日だけはなぜかひんやりした警戒心が湧いてくる。
「…何?」
今度はきちんとビブスを脱ぎ、振り向く。平静を装ったつもりの声が、わずかに震える。
「何って、まさか分かってないん?」
慣れた手つきでビブスを畳みながら、心底不思議そうな悠の目が僕の頭からつま先をさっと撫でる。
「フープリレーの時、顔真っ赤やったやろ」
そのシンプルな一言が、妙に胸の奥にすっと入ってきた。
「てかさ」
少しでも力を入れるとぼろぼろ崩れそうなくらい風化したカゴにビブスを放り込んだ悠が、振り向きざまににやりと意地悪な笑みを浮かべる。
ひんやりした警戒心が、胸の中で存在を主張してくる。暑いはずなのに、肩や背中だけがなぜか寒い。
「お似合いじゃね?…織宮さん?と」
すでにビブスを脱ぎ終わった織宮さんとクラスの女子数人が喋っているところを視界の端で捉えながら、反論の言葉を考える。
そんなことない。そういう関係じゃない。
紡ぎ出された反論の言葉はひどく無難で、胸に小さな引っ掛かりを残してしまう。
「ま、頑張れよー」
僕の前から離れて緋由と話す悠の後ろ姿から目をそらし、ビブスをカゴに置く。



