「あの…」
さらりと冷たい、誰かの手が僕の左手をそっと掴む。
「て、手汗やばかったらごめんなさい」
僕と目があって間もなく、織宮さんがふっと静かに目を伏せる。
彼女の頬に落ちたまつ毛の影が、ほんのり桃色に染まった柔らかそうな唇が、『大丈夫』の3文字を僕の喉に詰まらせてしまう。
指先に小さな心臓でもできたのかと思ってしまうほどに、憎たらしいほどに、指先が熱い。
僕の全身をその熱が包み込んでしまう前に、意図的に深呼吸して熱を奥深くに押し込む。
間もなく、「よっしゃ行くぞ!」という男子生徒の威勢のいい掛け声が、僕の体の熱を完全に押し込めてしまった。



