「さっき決めた火おこし班の子ら、こっち集合!」
最近流行りの『健康にいい(?)水』を一口飲んだ見原が、手を叩いて指示を飛ばす。
「行くぞ」
僕の腕を肘で小突いた緋由が、僕の前をすたすたと歩き出す。
何となくピントが合わないまま緋由の背中を追いかけ、火おこし班の集団に合流する。
「みんなうちわ持ってきたよなー?」
見原の確認に、「やっべ、俺忘れたんやけど…」と緋由が焦った表情を浮かべた。
「持ってきてへんかったら食べれへんからなー」
脅しじみた見原の言葉を右から左に聞き流し、僕はさりげなく左の方に視線をスライドさせる。
僕の視線の先にいる彼女――織宮さんは、風になびくふたつ結びの髪を手で軽くなでつけながら、真剣な表情で話を聴いている。
その風に乗って、静かな花のような匂いがふわりと流れてきた。
「笠原!」
センチメンタルな気分でその匂いに浸っていると、見原が僕を呼ぶ鋭い声でその気分はあっさり破壊された。
「最近ぼーっとしすぎや。気ぃ引き締めなさい」
「すみません」
頭を下げると、緋由が哀れみを込めた目で僕を見てきた。
多分彼は何もわかっていないのだろうけど、なんだか見透かされているような気がして、居心地が悪かった。



