近くにいるための嘘

「え!?美桜!?」
「髪の毛ピンクだー!全然印象違う!」

「菜々子は変わらないね」

「これでも結構変わったと思ったけど、美桜には負けるわ」

久しぶりに高校時代の友達に会う。

「東京どう?楽しい?」

「うん、めちゃくちゃ楽しい」
「あのね、私がオーディション番組ハマって推してた人いたじゃん?」
「その人、同じ大学で、仲良くなった」

「なにそれ!?少女漫画の世界じゃん!」
「えー!推しですって言ったの?」

「うん、言った」
「あの番組見てた人あんまりいないみたいで、美桜ちゃんは特別って言われた」

……大丈夫。私は、悠太郎くんの特別だから。

「やばいそれ、美桜、漫画の主人公じゃん」

……全然違う。
多分、私は脇役。主人公の恋を盛り上げる、当て馬。

「……主人公に、なれたらいいのにね」

「美桜のその見た目で主人公じゃないわけがないよ」
菜々子は笑うけど、私は全然笑えなかった。

「菜々子は?彼氏とかできた?」

「もちのろんよ!」
写真を見せてくれる。

幸せそうな菜々子が羨ましかった。
……何者にもなれない自分が、悔しかった。