近くにいるための嘘

「悠太郎くんまた来てねー!」
先輩たちの熱烈なラブコールを背に二人で学食を出る。
なんとなく駅まで一緒に帰るけど、悠太郎くんの顔が見れない。

「またこういうのあったら呼んでよ」

……それ、紬ちゃんに会いたいから?
なんて、聞けない。

「うん、分かった。また来てね!」
わざと明るく答える。

紬ちゃんに会ってほしくない、って思っちゃって、
自分の意地の悪さにガッカリする。

……そんなこと、思いたくない。
推しの幸せは、私の幸せ。

「パン食べすぎて、お腹パンパン」

「なにそれ、ダジャレ?」

こんな悠太郎くん、紬ちゃんはきっと知らない。
私だけが知ってる悠太郎くん。
やめて、私から、悠太郎くんを取らないで。

「じゃあね、美桜ちゃんまた明日」

駅で手を振って別れる。
見えなくなるまで手を振ったけど、悠太郎くんは一度も振り向いてくれなかった。

これが、紬ちゃんだったら。

人目も構わず涙が出た。

「お姉さん、泣いてるの?」
声をかけてきたお兄さんの手を振り払って、トイレに駆け込んだ。