近くにいるための嘘

「ねえ、今日のパン研、誰でも呼んでいいんでしょ?」
「私、悠太郎くん呼んじゃおっかな」

今日のパン研の集まりは、学食でパンパーティーをするらしい。

「いいんじゃない?」
「悠太郎くん連れてったら、先輩たち喜ぶよ」
「それよりさ、今日商店街の限定のやつあるらしい」
莉子は悠太郎くんよりパンの方に興味があるみたい。

「じゃあ先行ってて」
「私、悠太郎くんと行くから」

莉子に手を振って、悠太郎くんに話しかけに行く。

「ねえ、今日パン研来ない?」
美桜のお誘い、断らないで?

「美桜ちゃんパン研入ってるんだっけ。俺、部外者なのにいいの?」

「うん、今日は学食でパン持ち寄って食べる会だから」

「俺、パン好き。行こうかな」
……パン好きなの。知らなかった。
またひとつ、悠太郎くんの情報ゲット。

「決まり!行こ行こ!」
つい悠太郎くんの腕を取ってしまう。

待って待って、と笑う悠太郎くんが愛しい。
もう、ずっとこのままがいい。

学食に入るとパンの良い匂いがした。
あっという間に悠太郎くんは先輩たちに囲まれる。

「えー!悠太郎くんだ!」
「悠太郎くん連れてきたの?」
「ねえねえ、これ食べてみて」

やめてよ。
悠太郎くんは、私の……と思いかけて、はっとする。
皆の悠太郎くん、って言ったのは、私。

「これも食べていい?」
「うん、それは1年の子が作ったやつ」
あ、これ、紬ちゃんのパンだ。

「……え、うまっ」

「美味しいよねー、私もこの子のパン好きー」
こないだ本当に感動した。
悠太郎くんも同じものに感動していて、嬉しくなる。

「これ、誰作ったの?」

「あの子」

私が指さした先を見た悠太郎くんは、見たことの無い顔をしていた。